第15章 疑いと手枷
「で、秋本どこ行ったんじゃ?浮気…そりゃ逆ジャな。」
玄関の上がり口に腰かけた善司が、煙草を吹かしている。
「………。」
本当の事を言うべきだろうか。
言って良い方向へ進むとは限らない。
むしろ、悪い方向に進む気がする。
――彼が宗次郎さんなら素直に言えるのに。
ジッと善司を見た。
「……今、ワシが宗次郎だったら良いのにと思ったジャろ?」
ギクッ――
なんで今日は感が鋭いのだろうか。
「安心せぇ。嬢ちゃんには何もせんわ。西条会の事で迷惑かけたからな。」
そう言った善司の口と鼻から煙草の煙が出ている。
でも言えるはずがない。
清治君の事がバレてしまうから。