第14章 喧嘩の渦
「……大丈夫だ。」
、吸いかけの煙草を捨てながら、俺は言った。
俺がもし口達者な野郎だったら、気の利いた言葉の一つや二つ言えるだろうに。
自分でも不器用な人間だと自覚している。
「…うん。」
そんな不器用な台詞でも、彼女は安心したように頷いていた。
うっすら笑みを浮かべ、ジッと此方を見ている。
――喧嘩していても、彼女は俺を信じてくれているみてぇだ。
そう思い込むだけでも、なんだか嬉しくなった。
「つうか、別に俺一人でも充分なんだけど。」
ブチッ―――
煙草のフィルターをちぎりながら清治が言った。
「………とか言って本当は助けて欲しいんだろ?」
「素直になれよ。」
皆が清治を見ている。
「……別に。」
動揺する素振りもなく、平然とくわえた煙草に火をつけた清治。
煙がユラユラと上がっている。
一見普通の行動。
だけど俺は気づいていた。
煙草をわずかに噛んでいることを。
「素直になれよ。……この前も言っただろ?時には助け合いも必要なんだ。人間は一人じゃ生きていけねぇ。」
「……そんなの忘れた。」
そう言いつつも、一瞬清治の顔が歪んだ。
こいつ、……俺に似てんな。
まるで昔の自分を見ているようで笑えた。