第14章 喧嘩の渦
「…いや、こいつの言ってることは本当だ。この前、中村から聞いた。」
誠也君が口を開いた。
あたしは彼を見ないように顔を反らす。
「中村?…あぁ、あのパンチパーマのゴリラか。」
「あぁ、そのゴリラだ。」
西村の言葉に誠也君が頷く。
――ゴリラで通じるんだ。
何気に中村の顔を思い出して笑ってしまう。
「お前大変だな。ヤクザに追われて、族にも追われてやべーんじゃね?」
「……別に。あんた等に関係無いじゃん。」
三善先輩の問いに清治君がそっけなく答える。
ガシッ―――
「なんだよ、その言い方ッ!!」
三善先輩が清治君の胸ぐらを掴んだ。
激しく掴んだ為、被っていた帽子が頭からこぼれ落ちた。
綺麗な銀髪が西陽に反射して光っている。
本当に綺麗な髪だ。
「落ち着け。」
誠也君が、清治君から三善先輩を引き離した。
「でも――。」
「こいつはこういう性格なんだよ、我慢しろ。」
「………。」
三善先輩はまだ何か言いたそうだったが、誠也君の言葉に口を閉じた。