第14章 喧嘩の渦
「お前が反抗したくなる気持ちもわかる。」
冷たいコンクリートの床に腰掛ける藤崎。
ポケットから煙草を取りだしくわえた。
「だけど、人の親切は素直に受け止めるべきだ。」
煙草につけられる火。
ユラユラと煙が上がっている。
「……知らねぇ。」
顔を反らし呟く清治。
「………。」
なにも言わないが、西村は更に不機嫌になった。
「でないと、お前が後悔することになるぞ。」
そう言った藤崎の目が太陽に反射してギラリと光った。
真剣な表情で、嘘や偽りの色は見えない。
「後悔……んなの、とっくにしてる。……あんなクソみたいな家に生まれたこと事態"後悔"なんだよ。」
ギュッと握りしめる拳。
「なんで?」
黙っていた西村が口を開いた。
「…あんた等に話す意味も無いし、時間も無駄。つーか思い出したくもない。」
吐き捨てるように言った言葉。
清治の顔が微かに歪んだ。
「いちいちムカツク野郎だなテメエは!!」
西村が叫んだ。
今にも殴りかかりそうだ。
「…べつに言いたくないなら聞かないし、詮索するつもりもない。だけど、人の話は真面目に受け止めろ。」
「……ホント、あの人の周りにいると訳わかんねぇことばかりだ。」
「あの人?誠也か?」
「あぁ。」
藤崎の問いに清治が頷いた。
「その内 分かるよ。それに昔っからアイツと一緒にいるけど、おもしろいことばかりで飽きねぇんだ。」
「どういう――」
バンッ―――
突然、清治の声を遮るように、激しく屋上の扉が開いた。
そして、入ってくる者。
苛立ちを含んだ足取りで、バタバタと踵(かかと)の潰れた上履きが暴れている。