第13章 恨みの連鎖
目線の先にあるのは、桜と岩中の若頭。
彼女の後ろに、アザだらけの男がいる。
「――せ。」
微かに聞こえてきた声。
宗次郎のものだ。
すると、彼女が目を擦り、ジッと宗次郎を見ていた。
そして、わずかに反らす彼女の顔。
微かに頬が桃色に染まっている。
イライライラ―――
身体のそこから沸き立つどす黒い負の感情。
それは、あっという間に全身を覆った。
なぜ、奴はいつもタイミングよく彼女の前に現れるのだろうか。
偶然にしろ、腹が立ってしかたない。
まるで、今まで築き上げてきた大事なモノが奪われていくようで。
醜い嫉妬心が生まれる。
「………。」
彼女が此方を見た。
笑いかける余裕もない。
すぐ、顔に出やすい俺。
想像しなくても、自分が今どんな顔をしているかなんて直ぐにわかる。