第13章 恨みの連鎖
「…いい加減彼女から手を放せ。」
騒がしい彼等をまるで空気であるかのように完全に無視し、あたしのところまで来た宗次郎さんが言った。
ジッと、あたしの手を掴んでいる男を見ている。
「いや、でも…。」
戸惑う男。
「放せ。」
宗次郎さんの目付きが一瞬変わった気がした。
どこか冷めたような目。
「はっはい。」
男もそれに気付いたのか、あたしの手を放した。
解放された手で目を擦る。
やっぱりさっきのは見ま違いだろうか。
再び宗次郎さんを見れば優しそうな目をしていた。
「また、迷惑をかけてしまってすまない。」
「いえ、あたしこそ助けてもらって……すいません。」
なぜだか彼から目を反らしてしまった。
まともに顔が見れない。
見ると胸が暴れ出すから。
騒がしいはずの加藤達の声も、周囲のざわついた声も耳に入らない。
この空間が別の場所のように思える。
ゾクッ……
が、突き刺さる視線を感じて背筋に悪寒が走った。
目線をずらせば松崎君がジッと見ていた。
でも、彼ではない。
不思議に思い、もっと目線をずらすと見えた不気味なオーラ。
尋常ではない目付きの持ち主。
誠也君だ。
――ヤバい。
直感でそう感じた。