第13章 恨みの連鎖
「あほぬかすな、いつの情報やねん。とっくに若頭補佐に昇進しとるわ。山代は情報おっそいなぁ。」
ニヤニヤと笑いながら加藤が九条を見ている。
「………っ――。」
舌打ちした九条の顔が歪む。
犬猿の仲というのはあながち間違っていないらしい。
「それに豪龍会との抗争で大活躍したんやでワシは。そん時、ジブン何しよったんや?」
「……留置場に勾留(こうりゅう)されとった。」
「ギャハハハハ、そら傑作やわ!!」
加藤がさらに笑いだした。
静かな廊下によく響いている。
むしろ煩い。
教室から生徒達が何事かと顔を出している。
いまだに、顔がアザだらけの男に腕を掴まれているあたしは、状況が理解できていない。
動けないでいる松崎君も同じ。
加藤と九条を交互に見ている。
「クソ犬がぁ……。」
ギィッと噛み締める奥歯。
こめかみに青筋が浮き出ている。
「あー、すまんすまん。ホンマアホすぎて思わず笑ってしまったわ、アホ猿。」
そう言いつつも、ニィッと意地悪く笑う加藤。
挑発しているようだ。
「それに、ここはギリッギリワシ等のシマやで。勝手に暴れられたら困るわ。」
「だからなんだ?」
怒りで拳を震わせながら九条が尋ねる。
「帰れ。」
「あ?」
「考えたらわかるやろ?人のシマで暴れたらアカンっちゅう協定あるやろが。あのゴリラオッサンといいこのアホ猿といい、山代はバカ集団か?」
「なんやと?」
加藤に近付く九条。
あたしの隣を通りすぎていく。
その際に見えた九条の目付きが、尋常じゃなかった。
あたしは、ゴクリと息を飲む。
「もう一回言ったろか?」
まだ、挑発し続ける加藤。
この人も充分バカだ。
「アホざ――」
バコッ―――
「ブッ―――。」
そんな加藤にもとうとう天罰が下った。
何者かの拳が頭にめり込んでいる。
もちろん九条じゃない。
皆がそちらを向いた。