第13章 恨みの連鎖
「…。」
彼が顔を反らした。
悔しそうに唇を噛んでいる。
そして、離れていく松崎君の手。
彼が握っていた場所に微かに温もりがある。
「兄貴、捕まえました。」
振り向くアザだらけの男。
「連れてこい。」
低い男の声色。
身体が引きずられていく。
抵抗する気力もない。
というより、するつもりはない。
あたしが逃げれば、必ず誰かが被害に遭う。
最悪の事態は避けるべきだ。
どんどん離れていく松崎君に背を向けた。
「兄貴に頼まれて来てみれば、九条(くじょう)…やっぱ来とったか?ジブン等恥ずかしくないん?それにここは、人のシマやで?協定まもらなアカンで?」
すると突然聞こえてきた関西弁。
聞き覚えのある声。
無数の足音。
「加藤ぉ………。」
九条と呼ばれた男の眉間にシワが刻まれる。
思わずあたしは振り向いた。
「よ、久しぶり。元気にしとったか?」
そこには、時期外れのいつもの扇子を扇ぐ加藤と岩中の若衆がいた。