第13章 恨みの連鎖
「…はよ。」
入ってきたあたしに気付いた彼が、振り向いて小さく言った。
「…おはよ。」
あたしも小さく答える。
「………。」
それから彼はなにも言わずに黙々と朝食作りを続けた。
なんだか居づらくなったあたしは、トイレを済ませて顔を洗い歯を磨く。
二階に上がり、着替えと化粧をして髪を整えた。
結局支度には1時間近くかかり、その間に勇人君も清治君も起きた。
「いただきます。」
小さく言った言葉。
やはり、朝食の時間は静かだった。
ただ聞こえてくるのはテレビの音。
なんだかそれが寂しかった。
けれど、彼に話しかける雰囲気でもないし、ましてや度胸もない。
ただ義務的に口にご飯を運ぶだけ。
綺麗な卵焼きはほんのり甘いのに、あたしの中は苦い。
誰か話して。
いや、誰かに頼るんじゃなくてあたしが話そう。
「あのさ…。」
小さく口を開く。
「ごちそうさま。」
同時に重なった低い声。
あたしの声は、消されていく。
食べ終えた誠也君が、立ち上がって食器をシンクにおろした。
そして、部屋を出ていく彼。
結局何も話せないまま、家を出る事になった。