第12章 真の家族
「さみぃ……。」
窓を開け、部屋の温もりを感じようとする俺。
中に入って戸を閉め、ふと目を向けたベッドの上。
黒い塊が何かにくっつくようにいた。
よく見れば桜だ。
ギュッと人形を握りしめている。
「スー……スー……。」
聞こえてくる寝息。
疲れていたのか、眠ってしまっていた。
「風邪ひくぞ。」
そう言ってかける布団。
「ん……。」
彼女が寝返りをうった。
すると見えた顔は、にこやかに笑っていて気持ち良さそうに眠っている。
キシィ……
思わずベッドに腰かけた。
眠る彼女の髪を撫でながら、自然と緩む唇。
――自分だけモノにしてぇ。
沸き上がる醜い感情。
「……俺ってきたねぇ男だな。」
思わず口ずさんでいた。