第12章 真の家族
「…ただ、兄貴と姉御がずっと仲良しでいてほしいだけ……家族だから。」
風呂上がり。
リビングに向かう途中、勇人の声が聞こえてきた。
思わず立ち止まった。
"家族"
その言葉が、心に染み渡る。
クシャ……
乾いたばかりの前髪を掴んだ。
「大好きなんだ俺。兄貴と姉御が笑っているところを見ると、幸せな気持ちになれる。」
勇人がそんな風に思っていたなんて知らなかった。
それどころか、小学生の弟にまで心配かけている。
情けねぇ…。
「だからさ、兄貴と別れるなんて絶対に言わんで!!」
もう、これ以上ここにいたくなかった。
自然と足が二階に向かっている。
いつもならなんでもない階段が高く感じて、上げる足がなぜか重たい。
それは、今の心と比例していた。