第12章 真の家族
ダイニングキッチン。
あたしはシンクの前にボーッと立っている。
お風呂を上がってやろうと思っていた食器洗い。
すでに食器は綺麗に片付けられていた。
きっと彼がしたのだろう。
食卓の椅子に座り、うつ伏せになった。
不器用な彼が時折見せる優しさ。
それに触れると、いつも胸が熱くなる。
でも、あからさまに無視されると辛くて自然と彼を避ける行動をとってしまった。
正直、また無視されると思ってた。
だから、彼から逃げるように脱衣所を出た。
でも、話かければよかった。
もし、話しかけていれば状況が変わっていたかもしれない。
なのに…バカだあたし。
それがきっかけで、
"別れよう"
って言われたらどうしよう。
自然と涙が込み上げてきた。