第12章 真の家族
彼女の入っていた浴室はまだ微かに温もりがあった。
レバーを上げてシャワーからお湯を出す。
最初は身を震わすような冷たい水。
徐々に水は温もりを帯びていく。
冷えきった身体を温めるお湯は温かい。
だけど、そのお湯では俺の心までは温められない。
"ごめん。"
なんでさっき、その一言を言わなかったんだ?
低くても許してもらえる可能性があったかもしれないのに。
情けねぇよ。
ワシャワシャと髪の汚れを洗い落とす。
キュッ――
一度レバーをおろしシャンプーを少し手に取った。
顔に張り付いた濡れた髪を掻きあげながら、髪を洗った。
ザァァアア―――
再び流される、シャワーのお湯。
汚れと共に泡が流れゆく。
少しの間この泡になれたらいいのによ。
非現実的な事を考える自分になんだか笑えた。