第12章 真の家族
トントントントン―――
れ
軽やかな包丁の音。
今日は色々とあったなと考えながら、夕食作りをする。
寒いからビーフシチュー。
ブイヨンベースの沸き上がる海に、野菜とお肉が気持ち良さそうに浸かっている。
火を中火にして、じっくりと煮込む。
本当は、前の日に作ってじっくりと煮詰めた方が美味しいんだろうけど、あいにくそんな時間はない。
野菜とお肉に火が通ったのを確認すると、ルーを割りいれた。
そして、かき混ぜる。
「うん、美味しい。」
少し味見をして緩む唇。
ポテトサラダも出来たし、今日の夕食は上出来だと思う。
「ご飯出来たよ。」
笑顔で振り向くあたし。
「………。」
そんなあたしをジッと彼が見ていた。
心なしか不機嫌そうで、なんだかドキドキする。
でも、出来るだけ気にしないようにして、食卓に料理を置く。
その間も突き刺さる視線。
正直、居づらい。
「ご飯食べよう。」
そう言うとやって来るのは勇人君と清治君。
「………。」
誠也君は黙ってソファーに座っている。
「誠也君。」
「………。」
呼んだが無視された。
「誠也君。」
「………。」
再び呼んでも無視。
こういう時の彼って本当に幼稚。
女の方が心が大人になるのが早いと誰かが言っていたけど、それは本当かもしれない。