第12章 真の家族
「善司、人のシマでいったい何をしているんだ?」
突然聞こえてきた声。
誠也は、宙に浮く拳を止めた。
「宗次郎ぉ……」
そう低く吐き出しながら振り向く善司。
眉間に大量のシワが寄っている。
しかし、目の前の男…宗次郎は顔色一つ変えずにジッと善司を見ていた。
それだけでも威圧感が尋常じゃない。
誠也の喉がゴクリと音を立てた。
彼は分かっていた
自分がかなう相手ではないと。
もしここで争いになろうものなら、確実に負ける…と。
けれど二人は黙って互いを見つめあっている。
悪い意味で。
「お前が来るような場所じゃない。自分のシマに帰れ。」
口を開いたのは宗次郎。
低い声色で淡々と言った。
「来るような場所じゃない?…それはおどれも一緒やろうが。」
続いて善司が口を開く。
牙を剥き出しにしながら、縄張り争いする獣のごとく唸っている。
「偶然通りかかった。」
「にしてはタイミングがよすぎジャ。…誰に頼まれた?」
「今日はやけに勘ぐり深いな。…バカのくせに。」
宗次郎は微かに舌打ちした。
誠也はそれを見逃さなかった。
「誰がバカじゃ!!それにワシはなぁ、用があってここにいるんジャ!!」
「用?…お前にも用事と言うものがあるのか?」
鼻で笑っている。
「あるわ!!い ちいちムカつくんジャ、おどれは!!」
善司の眉間のシワがさらに増えた。