第12章 真の家族
「ワシは好みにうるさいんジャ。今までコマした女はなかなかやったぞ?」
そう言ったオッサンの親指が上がった。
――へし折りてぇ…。なんかしんねぇけど、あの指へし折りてぇ。
握った拳がワナワナと震える。
――腹減ってる上に、オッサンの自慢話を聞いて…何やってんだよ俺。
極力、鼻傷オッサンを見ないようにした。
見た瞬間殴ってしまいそうだからだ。
「にしても、嬢ちゃん遅いな。」
――誰のせいだよ!!
もう、怒りが限界に近い。
殴りたい。
タコ殴りしてやりてぇ。
あのアゴヒゲも引き抜きてぇ。
眉間に大量のシワがよる。
こめかみには、青筋が立つ。
「な…なんで、お前がの事気にすんだよ?」
怒りで震える唇で尋ねる。
「あ?一緒に風呂に入ろうかと思って。」
殺そう。
ひと思いに殺してしまおう。
拳が中に浮いた。