第11章 漆黒の棺桶
「ハァハァハァ――」
乱れる息、たれる汗。
そんなに走っていないのに、かなり身体が疲れている。
分かってはいたけど、あらためて自分の運動能力の低さに笑ってしまう。
というより、情けない。
「……大丈夫?」
小さく尋ねてくる清治君。
「平気、平気。」
と言っても、いまだに息は乱れている。
「………。」
黙ってジッと見つめてくる彼。
「何?」
あたしは、ハンカチで汗を拭いながら、首を傾げた。
「……いや、なんで姉御ってさ秋本さんと付き合ってるわけ?」
「…え?」
場違いな質問に少々戸惑うあたし。
「……なんとなく気になったから。」
清治君はそう言うと、深く帽子をかぶり直した。
その為、どんな表情をしているかわからない。
「本気で好きだから。」
付き合っていくのに、理由なんていらない。
ただ、彼が好き。
好き以上に愛を感じている。
それだけであたしは充分だと思う。