第11章 漆黒の棺桶
「ガキはよく見てるな。」
笑いながら誠也が言った。
「バカにしとるんか?」
振り向いた善司の眉間に大量にシワが集中している。
「あぁ。」
素直に答える誠也。
「…おどれはいっぺんあの世見せたろか?あ?」
それがなお、善司の怒りを煽(あお)る。
「協定。」
「いちいちうっさいんジャ、ボケッ!!」
ますます善司の眉間にシワが増えた。
けれど、誠也はニヤニヤと笑っている。
バカにするのが楽しくてしかたないのだ。
「若、買ってきました!!」
すると聞こえてくる男の声。
みれば大量の煙草の箱を抱えている。
1カートン以上ありそうだ。
「オゥ、遅か―――」
「あっ。」
男の腕から逃げていく煙草の箱。
地面をのたうちまわっているようだ。
「なにしとんジャッ、おどれは!!」
叫ぶ善司。
彼の怒りはつのる一方だ。
「すっすいやせん。」
慌ててそれを拾う男。
――山代組ってバカばっかだな。普通に1カートン買ってくりゃあいいのによ…。
それを眺めながら誠也はあきれていた。