第11章 漆黒の棺桶
「嬢ちゃんがここにおるんジャろ?」
振り向いて不気味に笑っている善司が、影を親指で指差した。
「知らねぇ。」
そっぽを向く誠也。
目線を合わせないようにしている。
「バレバレじゃ。」
そう言ってのぞきこむ影の方。
誠也の喉がゴクリと音を立てた。
「へ?」
覗き込んだ善司が間抜けな声を出した。
「なぁに?おじちゃん。」
そこには髪の長い幼い女の子が立っていた。
可愛らしいクマのぬいぐるみを抱えて、ジッと善司を見ている。
「これが嬢ちゃん?…いや、嬢ちゃんは嬢ちゃんやけど、嬢ちゃん違いや。」
困ったようにこめかみを掻きながら、少女を見下ろした。
「だから言っただろ?」
そう言いつつもホッとする誠也。
「ミユと遊んでくれるの?」
潤んだ瞳で少女が善司を見ている。
「は?嫌じゃ。ガキはあっち行け。」
シッシッと善司は子供を追い払う。
「……ブス!!アンタなんかアタチの方が願い下げよ!!」
そう捨て台詞を残し走っていく少女。
「なんやと!?このクソがきゃあ!!」
善司が猛った。