第11章 漆黒の棺桶
今から少し前。
電車を降りて駅を出たあたし達は、たわいない話を交えながらまっすぐ誠也君の家に向かっていた。
いつもと変わらない…はずだった。
彼の家に近付くにつれて、見えてきた車の群れ。
全ての窓が黒くて、普通の車では無いことがわかる。
「やべぇな。」
誠也君が呟いた。
聞かなくてもわかる。
きっとあの人だ。
無意識に立ち止まる足。
まるで、これ以上進むなと言っているようだ。
「俺…やっぱり行く。」
黙っていた清治君が口を開いた。
「あ?」
彼が振り向く。
やっぱり、目が恐い。
「ダメだよ、殺されちゃうよ!!」
今にも走っていきそうな清治君をあたしは制した。
「んなの怖くなんかねぇ!!だいたい、あんた等に助けてなんて言ってねぇんだよ!!余計な事すんな!!」
拳を握りながらハッキリと言った。
けれど、わずかに震えていた。
拳も、声も。
「言いてぇ事はそれだけか?」
いつもより低い声で誠也君が吐き出した。
「あ?」
「怖くねぇわりには…震えてんゾ?」
彼が清治君の腕を掴んだ。
「こえーんだろ?本当は?」
「違う!!」
「そうやって強がるのも悪くねぇ。だがな、テメェの命は大事にしろ。人生は一度っきりしかねぇんだ。判断を誤るな。」
鋭い眼光が清治君に突き刺さる。
清治 君は彼から顔を反らした。
キュッと、唇を噛んでいる。
そして、
「…わかったよ。」
小さく吐き出した。