第11章 漆黒の棺桶
「――くしゅんっ。」
すると、突然聞こえてきたくしゃみ。
それもこの場にそぐわない可愛いらしさのあるもの。
女だ。
「なんジャ?誰かおるんか?」
足を止めて、善司がキョロキョロと辺りを見始めた。
「……くしゅんっ、…俺だよ。」
慌てるようにくしゃみをし始めた誠也。
「んなわけあるかい!!」
「いや、俺だって。」
何回もくしゃみをしていた。
――コイツは何かを隠している。
バカな善司でもそれは直ぐに分かった。
「どけ。」
誠也を退けて進める足。
ザッ―――ザッ―――
スニーカーの底が地面を蹴っている。
「なんもねーてッ。」
後ろからしつこいくらいに言い訳をする誠也に、ますます怪しさがつのる。
そして、曲がり角から見えたひとつの影。
きゃしゃな体型で、女のものだと直ぐにわかる。
「はっはーん……。」
ニヤリと不気味に笑いながら振り向く善司。
「…なんだよ?」
誠也の額からタラリと汗がたれた。