第11章 漆黒の棺桶
「おどれのはえのきジャ。」
ニヤニヤと笑いながら小指を立てて見せる。
イライライラ―――
誠也の中の怒りの炎が燃え上がる。
男として自分の息子をけなされるのは許しがたいらしい。
ただし、息子といっても下の話だが。
「えのきじゃねーし!!松茸に決まってんだろ!!」
誠也は中指を上げた。
「残念ながら、えのきジャ。」
グイ――
善司の力で、その中指が曲げられる。
誠也の顔が歪んだ。
「それにワシは松茸以上じゃ。よう昔は女に言われたわ。鳴きながら"デカイ"ってな。」
口角がつり上がる。
「昔?」
「今は…なぜか女が寄ってこんのジャ!!」
頭を押さえながら叫ぶ善司。
「そりゃそうだろ。全体的に獣くせぇ。」
鼻を押さえる誠也。
「なんやて?いてこますゾ、コラァ!!」
激しく誠也の胸ぐらを掴まれる。
「協定。」
「ムカつくわッ!!」
胸ぐらを放し再び地団駄を踏み出した善司に、
――やっぱ、このオッサンバカだ。
誠也は隠れて笑った。