第11章 漆黒の棺桶
「ん……あれ、ここどこだ?」
傷の手当てを終えた頃。
ベットに寝ていた少年が目を覚ました。
「おはよう…じゃなくて、こんばんは。」
笑顔で彼の顔をのぞきこむ。
「……誰あんた?」
訝しげに少年が見てくる。
「助けたのに誰はねぇだろ。」
後ろにいた彼が不機嫌そうに言った。
「助けた?……あぁ、助けられたんだ俺。」
少年が、クシャリと自分の髪を掴む。
「…情けねぇ。」
そう言った少年の声が震えていた。
「情けねぇもクソもあるか。喧嘩が全てじゃねぇんだよ。人は助け合いながら生きていくもんだろ。それに――。」
カチン――
ボッ――
誠也君はくわえたタバコにジッポーで火をつけた。
「喧嘩が好きとかなんかで、あの鼻傷オッサンに手出したんだろ?あいつはバカでオッサンだけどただもんじゃねえ。相手の力量と自分の力量を推し測れねぇようじゃ……喧嘩なんてまだまだはえーんだよ。」
そう言って彼は煙を吸い上げた。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ!?」
「動いちゃダメだよ!!」
上体を起こした少年を、あたしは制した。
「前に突っ込むばかりじゃなくて、時には後ろを振り向くことも大事なんだよ。」
「は?」
彼の言葉に、少年は意味が分からないと言うような顔をしている。
「喧嘩 ばっかしても何も残らねぇ。無意味な喧嘩は敵を作るだけだ。それに気付かねぇでいると、いつか痛い目見るぞお前。」
そう言って煙を吐き出す彼。
少年はジッと彼を見ていた。