第10章 喧嘩王子
カラン――
お酒という名の湖に沈む氷が音をたてる。
紫の濃艶(のうえん)漂(ただよ)う店内の一角に座る宮田。
制服姿の為か、この店に全くといっていいほどそぐわない。
それに、さすが"違法店"と言うべきか、未成年どころか幼さが抜けていない少女が店内にたくさんいる。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
デカイ態度でソファーに腰かけている宮田は、テーブルに足をついて煙草を吸っていた。
彼の隣には女はいない。
彼が自ら"女はいらない"と言ったのだ。
オーナーはそれに対して笑顔でいたが、心のなかでは"何しに来たんだ"と怒りを沸々と沸き上がらせていた。
「おい、ガキ。」
「あ?なに、オジサン。」
宮田が吸い終えた煙草を灰皿に押し付けていると、突然声をかけられた。
顔を上げて見れば、強面の男達が宮田を見下ろしている。
考えなくても分かる裏家業の方々。
オーナーが呼んだのだ。
「ここは山代組のシマや。そこで暴れたらどうなるか……わかっとろうな?」
ボキボキと拳を鳴らしながら、先頭に立つアイパーの男が拳を鳴らした。
「だから何?お酒飲みに来ただけなんだけど?」
脅しにも動じず、お酒を口に含む宮田。
顔はヘラヘラと笑っている。