第10章 喧嘩王子
「美味しいッ。」
夕食。
笑顔で肉じゃがを頬張る、俺の向かいに座った彼女。
その笑顔が可愛くて、胸が暴れている。
いや、暴れている理由はそれだけじゃない。
先程の浴室での出来事、あのアングルが忘れられないでいる。
思い出すたびに、鼻の奥がジーンと痛む。
彼女の前で鼻血を出すわけにはいかない。
喧嘩ならまだしも、
"お前の尻見たの思い出して鼻血出したんだ"
なんて言えようものか。
嫌われる…確実に。
ゴクリと噛まずにご飯を飲み込んだ。
つーか、俺こんなんだったっけ!?
マジで、"翔菌"(別名:三善ウイルス)に感染したか!?
最悪……。
箸を片手に頭を抱えた。
「どうしたん?」
「あ?」
顔を上げると、勇人がジッと俺を見ていた。
「具合悪いの?」
心配そうにも俺を見ていた。
「いや、別に。」
と言って味噌汁のお椀をもつ。
啜(すす)ろうとお椀に近付ける口。
すると、ちょうど彼女の胸元が見えた。
モコモコとしたふわふわのパジャマに埋もれる胸。
――ダメだダメだダメだ!!
気を紛らわすように啜る味噌汁。
「あっお箸が――。」
そう言って屈もうとする桜。
その瞬間見えた下着。
ブフッ――
「兄貴汚ねぇ!!」
思わず味噌汁を吹き出した。