第10章 喧嘩王子
「つうか、何の前に現れてんだよ!!近づいたら殺すっつったろ!!」
「いつ?」
「夏の抗争。」
「んなもん、忘れた。」
耳を小指でほじる中村。
「テメェ、殺されたいか!?そのゴリラパーマぶち切るぞ!!」
誠也が立ち上がる。
「あ?やってみろや!!テメエの髪も抜くぞコラァッ!!」
中村も立ち上がった。
「テメェ!!」
車内で取っ組み合いを始めた二人。
周囲の人が怯えた様に見ている。
桜はそんな二人から距離をおいた。
まるで他人を装うかの様に。
「テメェはいっぺん殺さねぇと気がすまねぇ!!」
中村が叫んだ。
「とか言って今まで全部俺の勝ちじゃねぇかよ!!」
誠也が笑っている。
「どこが!?何勝かはしたわ!!」
「そりゃ、卑怯な手使ってだろうがよ!!」
「それでも勝ちは勝ちなんだよ!!」
「知るか!!」
二人の取っ組み合いは降りる駅まで続いた。