第10章 喧嘩王子
放課後。
「あー…寒い。」
冷たい風が吹き荒れる中。
正面玄関から出たあたしはふーと手に息を吹き掛ける。
コートを着てマフラーを巻いたって寒いものは寒い。
隣ではダウンジャケットを着た彼が煙草を吹かしているが全く寒く無さそうだ。
―――羨ましい。
そう思いながらも進める足。
「………。」
ダウンのポケットに突っ込んでいる彼の手を見つめる。
ぽふッ―――
そこへ、無言で片手を入れてみた。
「……おい。」
と、彼は驚いていたものの、そっと握られるあたしの手。
ダウンのポケットからはおいだされたけど、彼の温かい手がギュッとあたしの手を握っている。
思わず口元が緩む。
だって、今彼を独占しているのはあたしだから。