第2章 命の灯火
口を覆う呼吸器。
腕に繋がる細い管。
そして、胸につけられた機械。
何もかもが胸を締め付ける。
ジッとガラス越しに彼女を見つめながら、俺は力無くガラスに触れる。
彼女がそこに入ったのは先程の事。
まるでおとぎ話のお姫様のように綺麗な顔で眠っている。
僅かに上下する胸が、彼女の生を現していた。
"生きている"
そう思うだけで、胸が喜びで満ちている。
――抱き締めたい。
そう思うけども、おとぎ話の王子になれない俺はジッと見つめる事しか出来ない。
もどかしい。
もどかしいけれども、今は彼女が安心して休める事を心から願う。
"アイシテル"
声を出さずに、夢の中をさ迷う彼女に投げ掛ける。
彼女は気づいてくれるだろうか。
迷わずここまで戻ってこれるだろうか。
遅くてもいい。
確実に戻ってこれるように、自分の髪のように真っ赤な灯火を心に焚(た)いて彼女を導こう。
それが今の自分に出来る唯一の事。
フッとベットに眠る彼女に笑いかけた。