第2章 命の灯火
誠也は話に入り込めずにいた。
いや、入らなかったのだ。
自ら彼等と会話するのを拒んでいる。
今はそれどころではない。
"彼女が助かること"
ただひたすらそればかり考えていた。
手術室に入りたい衝動を抑えて、ずっと長椅子に座って頭を抱えている。
「心配なのはわかるけど、おめぇがそんな面してたら彼女が助かった時悲しむぞ?」
隣に座った堀田が言った。
「助かった時ってなんだよ!?助かるんだよアイツはッ!!」
誠也が堀田の胸ぐらを掴み叫んだ。
皆がそちらを向く。
その時、手術室の真上にある赤いランプが消えた。
それは、手術の終わりを意味する。
皆が真剣な表情で手術室のドアを見ている。
ガラガラガラ―――
ドアがゆっくりと開いた。
そして、出てくる緑づくめの医師。
ゆっくりとマスクを外した。
ゴクリ―――
皆が息を飲む。
ただ静かに医師が口を開くのを待っている。
彼の口からでる言葉で、絶望にも安心にもなる。
緊張が全身に走った。
「手術は……」
「ヘッ……くしょんッ――。」
医師が口を開いたのと同時に善司がくしゃみをした。
皆が彼を見ている。
「アホやオッサン。」
加藤が横目で善司を見た。
「だれが――すまん。」
善司が何かいいかけたが素直に謝った。
何故 なら宗次郎が威圧的に彼を見ていたから。
あれは間違えなく殺る目だ。
善司はそう感じ取った。