第7章 壮絶なる争い
ドクドクドクドク――
速く鳴る心臓が奇跡だと叫んでいる。
目の前に迫る大きなタイヤが、悔しそうにしている。
また味わってしまった恐怖。
「なんなんだよ……ちくしょうッ!!」
悔しくてバイクを叩いた。
腫れた顔の中にある小さな目からこぼれ落ちる熱いもの。
なぜ溢れたのか、彼は理解出来ていない。
けれど、せき止められないそれ。
服の袖で拭っても拭っても溢れ出てくる。
「……このまま、終わってたまるか。」
小さく吐き出す言葉。
ゴオォォオオ―――
走り出したトラックの音に消えていく。
彼を照らしているのは信号機の明かり。
大きな男は、そこで似合わない涙を流しながら小さく泣いた。