第6章 挨拶参り
ヴォン――ブォンッ――ヴォンッヴォンヴォン――
車一台通らない国道。
蛇行運転の低速で走るバイク。
そして、夜空に鳴り響くコール。
皆、寒い事も忘れて盛り上がっている。
これが本来の彼等。
光輝いて見える。
先頭を走る彼は輝く仲間を先導する道しるべ。
彼がいないと、皆が輝く事が出来ない。
皆にとっては大事な人。
あたしにとっても同じくらい大事な人。
彼は皆の目標でもあり、憧れの人なのだ。
と、あたしは思っている。
それにしても、今日はパトカーが一台もいない。
振り向いて後ろを見た。
何時もなら見えるはずのパトランプ。
なんの前兆か、不安が胸を過る。
「どうした?」
風を全身に浴びる彼が口を開いた。
「……なんでもない。」
そう言ってあたしは前を向いた。
歪む顔。
彼が見ていないのが唯一の救いだ。