第6章 挨拶参り
「…また…来るのかな。」
小さく呟く。
「だろうな。」
いつの間にか隣に座っていた誠也君が、あたしを見ずに言った。
「でも、大丈夫だ。俺は絶対に負けねぇし守ってやっから。」
あたしの頭を優しく撫でる彼。
あたしは熱のこもった目で彼を見つめる。
「桜。」
彼もあたしを見つめた。
お互いが見つめあう瞳。
いい雰囲気とはこの事だろうか。
「別れは~辛いよ~。」
突然聞こえてくる変な歌。
「見つめあって~別れる~。」
中村が熱唱している。
震える誠也君の拳。
「せ…誠也君?」
焦るあたし。
「さようなら~。」
「うるせぇんだよ、テメェ!!なんなんだよ、その歌は!!」
振り向いて誠也君が叫んだ。
「さよなら恋人(別れの歌)だ。」
電車が小さく揺れた。