第6章 挨拶参り
「……俺の仲間がバイクで潰されたんだよ。骨がイッちまってる。」
電車の中。
そう呟く中村。
「……そんなことする人はあの人しかいねぇだろ。」
その隣で、深刻そうに言う誠也君。
「誰だよ?」
中村が誠也君を見た。
「高嶋。」
「………。」
誠也君の言葉にあたしは顔を彼等から反らした。
二人があたしをチラリと見た。
そんな気がした。
「高嶋ってあれか?二年前に町で不良やりまくったって奴か?」
「あぁ。」
「なんで、そいつが今頃――。」
また中村が誠也君を見た。
「年少から出てきたんだよ、この前。というか何普通に馴染んでんだよテメェは!!」
「あ?いちいちこまけーこと気にすんなや、禿げるぞ。」
「無茶苦茶気になるわッ!!」
「あ?うるせぇんだよ!!」
二人が立ち上がって取っ組み合っている。
でも、そんなことさえも気にならない。
身体が、頭が、高嶋の恐怖に侵食されている。
高嶋の名前を聞くだけで身を震わすあたしは、本当に重症だ。