第6章 挨拶参り
「ゴリラが人の女口説いてんじゃねぇッ!!」
ゴッ―――
「ぶッ―――。」
中村の後ろから足が降ってくる。
誠也君だ。
勢い良く中村の背中にめり込み、中村は思わずよろけた。
「…ゴリラさん、ごめんなさい。」
悪いとは思ったが、あたしは頭を下げて断る。
「え?ちょ……俺、ゴリラじゃねーよ。……の前にフラれたァッ!!」
中村が地面に項垂れる。
「あったりめぇだ、ゴリラが俺の女口説こうなんざ百年はえーんだ!!」
そういいながら、誠也君が中村の頭を踏んでいる。
全くもって奇妙な光景だ。
というか、この人何しに来たんだ?と、思ってしまう。
「誰がゴリラだぁ!!」
叫びながら中村が立ち上がった。
「百年早い?んなわけあるか。俺は一度フラれたぐらいじゃ諦めねぇんだよ。」
再び上から睨み付ける中村。
「あ?お前はストーカーか?ストーカーゴリラなんか?」
下から睨む誠也君。
「俺がゴリラならテメェはなんだよ?」
「生まれたてのライオンの赤ちゃんだよ。わりぃか?」
「……可愛いなチクショウ。」
小さく中村が呟く。
そういう問題!?
あたしは顔を引き攣らせた。