第6章 挨拶参り
「見せつけやがってムカつくんだよ…。」
ゆっくりと立ち上がる中村。
「…なにが?」
彼が煙草を足で揉み消した。
「なんで…。」
「あ?」
「なんでテメェにはこんな可愛い彼女が出来んだよッ!!」
そう言って指差した先にいるのはあたし。
「は?」
敵味方なく間抜けな声を出している。
その間無言であたしの前までやって来る中村。
「あの……なんですか?」
見下ろす目が恐くてまともに見れないが、恐る恐る尋ねる。
シュッ――
勢い良く上がる中村の右手。
「テメェ!!」
叫ぶ誠也君が、地面を踏み込む。
「一目惚れしましたッ!!俺と付き合ってくださいッ!!」
言葉と同時に右手があたしの目の前まで降りた。
そして、中村が頭を下げる。
「へ?」
あたしは気の抜けた声を出してしまった。
殴られると思っていたからだ。