第6章 挨拶参り
「あぁ……。」
風を浴びながら、高嶋はヘラヘラと笑っていた。
バイクが人を乗り越える際に奏でた音。
それが心地よくてよかったらしい。
"情"
そんなものは彼にはない。
あるならあんなことをするものか。
ヴ―――ウゥ――――
「そこの暴走バイク止まりなさい!!」
聞こえてくるサイレン。
スピーカー音。
ますます笑いが込み上げてくる。
「ノーヘルに暴走にナンバー隠し止まらんかッ!!」
パトカーから男が叫んでいる。
「バーカ、誰が止まるかよ。」
そう呟くと上がっていくスピードメーターにタコメーター。
排気音がいっそう大きくなる。
「止まれッ!!」
警官は叫ぶも、止まらないバイク。
細道に入っていく。
「クソッ―――」
警官が悔しそうにハンドルを叩いた。
何故ならそこは車は入れない場所だったから。