第1章 草食系男子
___一週間後、ついに温泉に行くことになった私たち。
朝早く起きて、大きめのバッグにちゃんと用意するものが入ってるか確認して、出来るだけお洒落にしようと頑張って、何時もは適当にするメイクもちょっとだけ頑張った。
今日は彼が振り向いてくれるように、強引になって暮れるのを待って。
そんな言葉が今の私には似合っていた。
前の日にパックだってしてみたし、アイラインは嫌いだからしないけど、マスカラはちょっとだけした。
待ち合わせの10分前に駅についた私は周りを見渡した。
すると柱に背中を預けて、だるそうにスマホを見ている彼がいて、いつもより少し高いヒールを鳴らして小走りで彼のもとへ向かった。
「ごめん、待っちゃった?」
「ううん、ちょっと早く来ただけ。
...ん。」
何かと思えば、手を差し出して少し重いくらいの私の一泊二日用のバッグを持ってくれるようだ。
私の肩から下ろされたバッグをミナトは自分の肩に提げた。
そしてするり、と互相の手を絡める。
これはいつもすること。
数少ない彼のスキンシップ。
ミナトはいつも緊張しているのか手が凄く熱くなる。
その手を追い詰めるように握る。
すこし早めだったためか始発の電車の中はガランとしていて直ぐに座れた。
温泉までは約40分。
ずーっと他愛のない話をしたり、買ってきたお菓子を食べたりした。