第2章 王子サマ[ソーマ]
「え、えぇ…少し…」
いつもと様子の違う
アグニ様は
王子をチラチラと
気にしながら
頭をかいている。
"ソーマ様は寝られましたか?"
もしかして、
ソーマ様に聞かれると
まずいことなのかな…
私はアグニ様の腕を掴んで
廊下へ引っ張った。
『アグニ様…こちらへ。』
「っ、!!???」
『ちゃんと話してください。』
「っ……詳しくは言えない。」
『じゃあ、言えるところまで
言ってください。
ソーマ様には言いませんから。』
真剣さが伝わったのか
申し訳なさそうに
話し出した。
「実は……
ミーナを、その、
見つけたんです。」
『はぃ、モガッ!!!!??』
驚いて声をあげる
私の口を塞ぐアグニ様。
「静かにっ……!!」
『ご、ごめんなさい……
それで?』
「今、彼女は英国貴族の婦人として
裕福に暮らしています……。
だから、
国へは帰らないと言っています。
でも、このことをソーマ様が
知ってしまわれたら、
すごく、傷ついてしまいます。
だから、
私が、今している仕事が
きちんと終われば
ミーナに演技をしてもらうことに
なっています。」
『そういうことですか……』
やっぱりね。
ソーマ様はミーナのことを
慕っていたけれど
侍女のなかでは
最低な女だった。
私の母から受け継いだ仕事を
他人に押し付け
ただソーマ様の前でだけ
いい顔をする。
そんな女だった。
「驚かないのか?」
『えぇ……
まぁ…。
事情はよく分かりました。
私もソーマ様が
傷つくお姿は見たくありませんし、
今晩はきちんと
見張っておきます。』