第9章 死神より死神[葬儀屋]
「小生かい…??」
彼女は立ち上がって
小生を指差す。
「なんだい…??」
『これ、運ぶの手伝え。』
お願いというより、
命令だったけど、
小生は面白そうだから
従った。
「君は…何をしてるんだい…??」
死体を表の部屋から
奥へと運びながら
質問する。
『………私は……
……死体と話をしてるんだ。
それから、
彼女達に美しい最後を
飾ってやってるんだ。』
小生の前で死体を運びながら
振り向きもせず
はっきりと答える彼女。
小生は話ィ!?!?
なんて思ったが、
これからする彼女のシゴトは
会話、そのものだった。
**
ビニールと紐でぐるぐるにされた
死体をテーブルに置き、
スルリと紐をほどく。
ビニールから現れたのは
青白く冷たい印象の女性。
お嬢さんは
死体を見て、
額に額を合わせた。
それから、ブツブツと一人で話し出した。
『ん……
お前は…なかなか上品な顔立ちだな…
もと貴族か?
けど、この傷……
今はそんなに裕福な暮らしはしてないな?
なるぼど、
んー…眼球が傷だらけじゃないか……
目を擦るクセだな…
今の時期に花粉は飛ばないし、
埃っぽい場所での仕事か?……
女にしては体格もいいな。
力仕事…うん。
睡眠も不足気味だな…
指は…ペンだこだらけ、
手紙か…
こいつの名前は…んー…
おそらく、アリー…
手紙はおそらく、子供宛か…
命を狙われることは分かっていた…。
うん。逃げ出したんだな?
この服は…
ロンドンの東側にある
"サンセット"という店に売っているものだ…
おそらく、その辺りに住んでいた…』