第9章 死神より死神[葬儀屋]
ヒッヒッヒ…
死神の仕事も、
飽きてきたし…
そろそろ、
新しいことでも
したいものだねぇ…
小生が、うろうろしていると、
一つのアヤシイ雰囲気の
お店を見つけてねぇ…
入ってみたんだ。
カランカラン…
『…』
中には置物みたいに
じっと座っているお嬢さんがいた。
目元は髪の毛で隠れて
口元は布で覆っていて
顔がほとんど分からなくてねェ、
愛想もないから
小生も固まってしまったよ。
じっとこちらを見つめる
彼女に少しあせったかな…
「……」
しばらく沈黙が続いて
何か言葉を発しようとすると、
いきなり彼女の目玉が
ギョロっと小生の後ろ側に向いた。
カラン…
すると、
後ろの扉が少し強引に開いた。
入ってきた男二人は
小生をチラリと見てから
彼女の元へ何やら大荷物を抱えて
向かった。
カウンターのような場所に
三角座りで座っていた彼女は
先ほどよりもイキイキとして
その荷物を待つ。
カウンターにゴトリと物を置くと
刑事らしき男の一人が
「まただ。頼む。
身分、年齢ともに分からないことが多い。
分かっていることは
性別と湖で発見された
ということだけだ。」
と言った。
「…」
もう一人の若い刑事は
少しお嬢さんを不気味がり、
青ざめた顔をしていた。
ヒッヒッヒ……
ありゃあ、死体…だねェ…
それから二人は
そそくさと帰っていった。
て、ことは
このお嬢さん…検視官…なのかな??
小生がまたじっと彼女を
見ていると、
彼女が口を開いた。
『おい、そこの。』
布でこもってはいるが、
思ったより可愛い声だ。
口は悪めだけどねェ…