第8章 白い人[アッシュ]
彼女は買い物袋を抱えて
家へ帰ろうとしていました。
一瞬でした。
私がまばたきをした瞬間に
彼女は横たわり、
袋が倒れ
リンゴがころころと
転がっていました。
彼女は眠るように
倒れてしまいました。
近くにいた人が、
彼女が倒れたのをみて、
病院へ連れていきました。
頭から少しの血を流し
目を閉じたままの彼女
をおぶって病院まで連れていった男の名は
フレッド・アバーライン。
彼は彼女のパン屋のファンの一人でした。
もしかすると、
彼女がいっていた相手は
彼かもしれません。
そうでなくても、
彼のような素敵な方に
助けてもらったのですから、
二人の関係がこれから
どんどん親密になる可能性が高い。
私は彼女を自分の手で
助けるこのできない
女王の執事という役職(有名人)を
少し怨みました。
**
病院に運ばれた彼女は
少しの処置をうけて
元気になりました。
けれど、
一週間の入院を宣告され
仕方なくベッドでおとなしくしている
様子でした。
コンコン…
部屋のドアがノックされ
『どうぞ。』
彼女が答えると
「やぁ…!!!」
と、暑苦しい男が入ってきました。
『アバーラインさん!!!』
彼女の表情が明るくなります。
「こ、これ差し入れ…//
つまらないものだけど。」
そんな、彼女に頬を赤らめながら
頭をかく彼。
私はこれ以上見たくなくて
屋敷に戻ることにしました。
**
屋敷で私は
手紙を書いていました。
彼女が倒れる前に
ポストへ置いていった手紙の返事。
内容は
パン屋が繁盛していて
嬉しいといったものでしたが。
私は返事で
もう手紙を止めることを
告げました。
そして、
彼女の病室へ向かいました。