第8章 白い人[アッシュ]
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『えぇ!?
じゃあ、下りられなくなってたわけでは
ないんですかっ!?////』
「えぇ。
私は町を見渡していた
だけです。」
焦る彼女に
冷静に伝える私。
そうだとしても
何かおかしいシチュエーションでは
ありますが、
彼女は納得してくれたみたいなので
よかったです。
少し冗談話をしてから
『この辺りの方ではないですよね。』
他愛のない話をしました。
私から語られるそれは
ほとんど偽りでしたが、
彼女の語るそれは
嘘偽りない事実でした。
「…///」
ハァ…なんと切り出しましょうか。
なんだか、そわそわして
ティーカップを少し
握りしめました。
彼女には
まったく、焦りや
胸のたかなりなどはなく、
誰があんなことになっていても
こうなっていたのだろうなと
思い知らされます。
『急に話を変えてもいいですか?』
「え?、は、はい。」
突然そんなことを言い出す彼女に
こう答える私。
『み、見たこともない相手を
好きになるって…
あると思いますか?//…』
そう聞かれた。
「えっ…??」
彼女には好きな異性が
いるというのでしょうか。
『会ったことは…
あると思うんですけど、
あまりその時のことを
覚えてなくて…//』
………
失恋…でしょうか。
今まで見守ってきた分
とても悲しい気持ちになりました。
そんな存在に
気づけなかったことに
悔しさを感じました。
たくさんの負の感情が溢れるから、
彼女をそれで汚さないように
早々にさんのお宅を出ました。
「はぁ……」
肩を落とす私に気づいたのか、
一つ、パンをくれた。