【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
「い・・・いいのかよ? 兄貴、怒らねぇか?」
ジャンは恐る恐る窓を見上げた。
やはり人影は見えないが、やけに静かで不気味だ。
「だって、ジャンはリヴァイに見られているのがイヤなんでしょ?」
「そりゃ・・・まあな」
「じゃあ、行こう!」
「わ!」
ジャンの手を握る、柔らかい手。
思わず、“やばい、ちゃんと洗ってただろうか”と焦ってしまう。
学校でトカゲに触ったぞ。
昼飯の時にパンを手づかみで食べたぞ。
ションベンしたぞ。
鼻水を拭ったぞ。
「レオノア・・・!」
レオノアの手は、とても白くてすべすべしている。
その感触だけでドギマギし、顔が熱くなるのを感じた。
手のひらが汗でベタベタになっていなければ良いのだが・・・
「・・・こっち!」
若草色のサマードレスを翻しながら、薔薇の間を駆ける王女はとても綺麗だと思う。
同時に、王子はどのような想いで、あの窓から妹を見つめているのだろう、と不思議だった。
しかし、ジャンの意識は今、自分の手を引いて走るレオノアで満たされていた。
リヴァイの目の届かない場所に行く。
それはまるで、レオノアと二人だけの秘密を共有するかのようで、心臓が高鳴った。
会ったこともない兄に“勝った”ような気がして、ジャンがもう一度窓を振り返った、その瞬間。
パキンッ
何かの弾けるような音。
ジャンの耳にだけ届いた、その微かな音に背筋がゾクッとする。
「・・・え?」
ちょうど鼻と同じ高さにある薔薇の枝。
その先についている葉が、真っ白に凍っていた。
「・・・氷・・・?」
夏・・・なのに・・・?