【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
「お前は寂しくないのか?」
「寂しい?」
“どうして?”とばかりに首を傾げる王女に、ジャンは珍しく言葉に詰まった。
もしかしたら、自分の質問が彼女を傷つけてしまうかもしれない。
いや、“秘密”を知ってしまうと、もう二度と会えないような気がする。
今の季節はピンク色のバラが咲く、中庭。
一番のお気に入りだという小さな噴水の前に置かれたベンチに、レオノアと並んで座る。
それはジャンにとって、くすぐったいような、甘いような、大事なひと時だった。
「レオノアは俺と違って、一日中ここにいるんだろ・・・ひ、一人で」
「・・・・・・・・・・・・・・」
すると、しばらくジャンをじっと見つめていたレオノアが、フワリと微笑む。
「一人、じゃないよ」
「え? あ、ああ、そうだな。召使とかたくさん・・・」
「違う」
レオノアはジャンの言葉を遮ると、ベンチと真向いの壁の上階を見上げた。
「リヴァイがいるから、私は寂しくない」
「リ・・・ヴァイ・・・?」
「そう。私のお兄様」
レオノアの兄・・・
ということは、アレンデール王子・・・?
「お前に兄貴なんていたのかよ?!」
「うん。変だな、キルシュタイン夫人は内緒にしていたの?」
「初めて聞いたよ」
ジャンは混乱した。
学校の教室には、アレンデール国王の肖像画が飾ってある。
王妃様と、お姫様・・・つまりはレオノアがいるということも、最初に習うことだ。
だけど・・・
リヴァイ、という名前は初めて聞いた。
考えてみれば、母親はジャンが生まれるずっと前から王室の乳母をしているようだった。
ということは、レオノア以外に育てていた子どもがいるということだ。
「で、リヴァ・・・いや、おうじさまってヤツはどこにいるんだよ?」
「え、今もいるでしょ」
「は?」
ローズガーデンには、ジャンとレオノアしかいない。
“まさかコイツ、幽霊の話をしているのか”と、ジャンの背中に冷たいものが走った、その時。
「ほら、あそこ」
レオノアが指さした先は、城の上階。
「あの部屋にリヴァイがいるの」
アレンデール城のほとんどの窓は、常に木製の雨戸で固く封じられている。
しかし、その窓だけはガラスが太陽の光を反射していた。