【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
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ひょんなことから、王女と友人になって数週間。
ジャンが驚くほど、レオノアは“無知”だった。
もちろん、王女だけあって教養は高い。
頭も良いので、こっそりと学校の宿題を手伝ってもらうほどだ。
しかし、彼女は“外の世界”のことを何も知らなかった。
世間では当たり前の事でも、興味深そうに耳を傾ける。
ジャンは、レオノアと話していると、まるで自分が博識になったようで良い気分だった。
そして、王女は特に学校というものに興味を持っているようだった。
「それで? 授業中に蒸しイモを食べたサシャは、どんなお仕置きを受けたの?」
「昼飯抜きで、ひたすら外を走らされていた」
「かわいそう・・・ジャン達の先生はとても怖い人なんだ」
「かわいそうじゃねぇよ。アイツ、日が暮れるまで走れと言われた時より、昼はメシ抜きと言われた瞬間の方が悲壮な顔をしたぐらいだからな」
サシャ、コニー、マルコ、アルミン、ハンナ、フランツ。
ジャンにとってはわずらわしいとさえ思うことがある“友達”が、レオノアにはとても珍しい。
一度も顔を合わせたことがないのに、毎日彼らの話を聞きたがる。
本当は、もっと大人数で遊びたいのだろう。
もっと多くの友達が欲しいのだろう。
だから一度だけ、母親にサシャ達を城へ連れて行ってもいいかと聞いのだが、“絶対にダメだ!”と強く怒鳴られた。
怒りとも、不安とも、悲しみともつかないその表情に、ジャンはそれ以上何も言えなかった。
レオノアが、このアレンデール城の防壁の中だけという狭い世界で生きているのには、何か“秘密”があるのかもしれない。
それが王女というものなのか。
“お前しかいないんだよ、レオノア様のお友達になって差し上げられるのは”
あの時の母の顔が忘れられない。
「レオノア」
「なに?」
この国で一番美しい建造物だとされる、アレンデール城。
その中庭は、見たこともない花で埋め尽くされている。
でも、“それだけ”だ。
ここは、ひっそりとしているだけでなく、“冷気”すら感じる寂しい場所だった。