【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
突然の来訪者に罵られたレオノアは、目を丸くしていた。
「ぶ・・・ぶす?」
「そ、そうだ!! お前なんてブスだ!! ブース、ブース!!」
言ってやった・・・
言ってやったんだ、俺は!
母ちゃんを横取りするお前が悪いんだぞ!
ジャンは肩を上下させながら、チラリとレオノアに目を向けた。
まだ驚いたまま、こちらを見ている。
手に乗せていた雛が地面に飛び降りたことにも気が付かぬまま。
「・・・・・・・・・・・・」
すると、レオノアはゆっくりと瞬きをした。
“泣きだすか?!”と思って身構えたジャンだったが、次の瞬間、レオノアが口にした言葉に衝撃を覚える。
「私・・・ブスだったんだ。知らなかった」
泣くどころか、レオノアは嬉しそうに微笑んでいた。
「ありがとう、ジャン」
「は、はあ?」
「お父様も、お母様も、乳母やも、みんな私のことを可愛いって言ってくれるけれど、知らない人から見たら私はブスだったんだね」
「な・・・なんで嬉しそうにしてんだよ、お前」
普通、そこは怒るか、泣くところだろ。
気持ち悪いな。
「だって、今まで知らなかったことを知れたから」
「・・・お前、バカにされているんだぞ」
「バカにしているの? ブスなのはいけないことなの?」
「いや・・・そういうことじゃなくてっ」
ブスという言葉は、ただ口から勝手に出てきただけだ。
もっとたくさんの言葉を用意していたはずなのに、レオノアの顔を見た瞬間に、全部吹き飛んでしまった。
見たままと正反対の言葉ぐらいしか出てこなかった。
「ねぇ、ジャンは外から来たの?」
「あ、ああ・・・そうだけど」
「お友達はいる?」
「い、いるけど」
なんでそんな当たり前のことを聞くんだ?
「いいなぁ」
「お前はいないのか?」
「うん、私はいない。ジャンはすごいね」
「べ、別に! も、もし、お前が頭を下げるなら───」
“友達になってやってもいい”と言おうとしたところで、後ろからキルシュタイン夫人の声が飛んできた。