【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
ガサッ!!
「・・・ィ!!」
突然、背後の草むらから音がして、ジャンは飛び上がるように振り返った。
“お化け?!”と叫び声をあげそうになったが、そこから出てきたのはお化けと呼ぶにはあまりにも可愛らしいものだった。
ピヨピヨピヨと、カルガモの雛。
四つん這いになりながらそれを追いかけていたのは、一人の少女。
「・・・・・・・・・」
若草色のサマードレスを着て、肩より少し長い髪を三つ編みにしている。
何故か、右側の髪の一部が白髪となっていた。
その少女は、ジャンを見て不思議そうに首を傾げた。
「・・・あなたは、だぁれ?」
一匹の雛を抱えながら、まるで初めて見る生き物のようにマジマジとジャンを眺めている。
「ジ・・・ジャン」
「ジャン?」
すると、その少女はニッコリと微笑んだ。
「こんにちわ、ジャン。私はレオノア」
レオノア・・・こいつが、アレンデールの王女・・・!
俺の母ちゃんを盗ったヤツ。
腹の中にいっぱい罵声の言葉を溜めてきたはずだった。
しかし、その一つも出てこない。
相手が王女だから萎縮していまっているわけではない。
「・・・・・・そのっ・・・」
初めて会った人間、しかもレオノアにとっては不審な侵入者であるはずなのに、警戒心を見せるどころか人懐こそうな笑顔を見せている。
それに・・・
ジャンが知っている、どの女の子よりも可愛らしい顔立ちをしていた。
「どうしたの? 迷子になって困っているの?」
「ち・・・違う・・・お前・・・お前なんか・・・」
しかし、母を盗られた恨みは、なんとしても晴らしたい。
ジャンはキッとレオノアを睨みつけると、腹の底から叫んだ。
「ブース!!」
それが、精一杯の罵倒だった。