【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
なんで母ちゃんを横取りしたヤツの友達にならなきゃならないんだ。
女と遊んだって面白くないだろ。
まだ、コニーやサシャと遊んでいた方がマシだ。
ジャンは城に向かう間中、文句を垂れっぱなしだった。
しかし、それも城門の前に立った瞬間、ピタリと止まる。
「すげぇ・・・」
いったい、大人が何人がかりで開けるのだろうかと、首を傾げたくなるほど大きい門。
門扉は頑丈な木製で、その周りを囲むようにアーチ型に積み上げられた石の頂上に、王家の紋章だろうか、薔薇を髪に刺した女性の横顔が彫り込まれている。
いつも遠くから眺めてはいたが、ここまで堅牢だとは思わなかった。
「こっちだよ、ジャン」
母はその門ではなく、城のすぐそばまで迫っている海沿いの道を進んだ。
それはとても細い道で、手すりが無ければ足を踏み外して海に落ちてしまうかもしれない。
なんでここまで防備厳重なのだろうか。
そして、キルシュタイン夫人は小さなドアの所まで来ると、ポケットから鍵を取り出し、穴に差し込んだ。
ガチャンという音がして、潮風にさらされたドアが重たそうに開く。
先に入るように促されたジャンの視界に広がったものは、思っていた光景と少し違っていた。
「これが・・・お城・・・?」
城といえば、金銀で彩られ、豪華なドレスを着た王族達がそこらじゅうにいるのをイメージしていた。
しかし、アレンデール城は美しい装飾こそあるものの、決して派手ではない。
それにどこにも着飾った女王や貴族はいなかった。
・・・なんだか寂しいところだな。
それが、ジャンがアレンデール城に抱いた第一印象だった。
「さて、レオノア様はどちらにいらっしゃるかな? 中庭か、それとも家畜小屋か・・・」
だいたい、ローズガーデンか、鶏と遊ぶために家畜小屋にいる。
「ジャンはここでここで待っていな。レオノア様を探してくるから」
「分かった」
ジャンはそばにあった噴水の淵に腰かけ、アレンデール城のとんがった屋根を見上げた。
本当にここに王様が住んでいるのだろうか。
さっきから召使は誰も見かけないし、音もほとんど聞こえない。
ひっそりとしていて・・・なんだか夏なのに鳥肌が立つようだ。