【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
「いいかい、お前はこれからお城に行って、レオノア様にお会いするんだ」
「レオノア?」
「“様”を付けな! この国の王女様なんだから」
すると、ジャンは不満そうに思いっきり頬を膨らませた。
「なんで会わなきゃならないんだ」
「お友達になって差し上げるんだよ」
「友達ぃ?」
それはあまりに唐突で、ジャンはうわずった声を出した。
ジャンにとってレオノアは、母親を“独り占め”した憎いヤツだ。
なのに友達になるなんて絶対に嫌だ。
「知らないよ、なんで俺が友達にならなきゃいけないんだよ」
「城には他に子どもがいないからさ。それに・・・」
城とは無関係な人間の子どもを、レオノアに会わせるわけにはいかない。
リヴァイの秘密が漏れてしまう恐れがあるからだ。
これは、キルシュタイン夫人がリヴァイの頼みをアレンデール王に伝えた時、出されたたった一つの条件。
「お前しかいないんだよ、レオノア様のお友達になって差し上げられるのは」
キルシュタイン夫人は、今にも泣きそうな顔でジャンを抱きしめた。
無事に生まれ、育ってくれた我が子を、本当は危険な目に遭わせたくない。
しかし、毎日一人で遊んでいるレオノアをとても不憫に思う。
何より、リヴァイの生まれて初めてのおねだりを叶えてあげたかった。
キルシュタイン夫人にとって、リヴァイとレオノアは、お腹を痛めて産んだジャンと同じくらい愛おしい存在だった。
「・・・母ちゃん・・・? 泣いてないよな?」
母親のこんな顔を初めて見たジャンは、腕の中で何も言えなくなってしまう。
「お願いだから・・・レオノア様と仲良くしてあげてくれよ」
「・・・そいつの出方次第だけど・・・」
ジャンは不貞腐れたように頷いた。