【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第4章 For the First Time
“お願いがある”
昨晩、リヴァイにそう言われた時、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
ジャンが誕生する3年前、キルシュタイン夫人は一人の赤ん坊を産んだ。
ジャンにとっては姉となるはずの女の子だった。
しかし、神様は時に残酷な試練を与える。
赤ん坊は生後数日して、その短い命を終えた。
原因は不明だった。
泣き崩れるキルシュタイン夫人に、アレンデール王はこれから生まれてくる子の乳母になってくれないかと頼んだ。
初めてリヴァイ王子を腕に抱いた時、涙が溢れて仕方が無かった。
懸命に乳房に吸い付く赤ん坊に、我が子の姿を重ねた。
あれから10年。
リヴァイはとても良い子だ。
しかし、どこか“子どもらしさ”を感じさせない。
それは、キルシュタイン夫人は一度として、リヴァイが駄々をこねる姿を見たことが無かったからだった。
ジャンは我が儘で、甘えん坊で、泣き虫だが、それは子どもならば当然のこと。
一方のリヴァイは感情を押し殺し、両親に従順で、妹のためなら自己犠牲をいとわない。
その彼が昨晩、キルシュタイン夫人に初めて“おねだり”をした。
“どうか、レオノアに友達を作らせてあげて”
なんと優しい子なのだろう。
自分は外界との接触を断ち、城の一番奥の部屋に閉じこもっている。
彼にとって外の世界は、窓から見えるローズガーデンだけ。
それでも、妹が孤独にならないように願っていた。
「ジャンボ、よくお聞き」
しかし、キルシュタイン夫人は一つのジレンマに陥っていた。
我が子をアレンデール城・・・いや、リヴァイの側に近づけることに抵抗があった。
城に仕える少数の召使は皆、覚悟を決めているからいい。
だけど、ジャンは何も知らない。
もし、氷の魔法が暴発したら、この子まで失ってしまうかもしれない・・・・・・